🔴パニック障害とは


■体験者が語るパニック障害の実際


 

突然、理由もなく強い恐怖感が沸き起ります。人によって表現は様々ですが、身体の中から、今までに味わったことのない、何かが飛び出しそうなほどの強い感覚を覚えます。

 

また強い恐怖感と共に、身体にも不快な感覚が襲ってきます。これも人によって違いはありますが、動悸や、吐き気、手足の震え、めまい感、喉のつまり感など、一時的な自律神経失調状態に陥ることになります。

 

そして多くの人が、びっくりして、その場を離れよう、どうにかしようと必死になります。自分では無意識ですが、その大きなインパクトある出来事に、脳は一時的なフリーズ状態に陥り、正常な判断システムを失ってしまいます。

 

しかし、そんなパニック状態もしばらくすると、何事も無かったかのようにおさまります。その後、気になって病院に行っても異常がありません。

 

その時のあなたはどんな状態だったのでしょうか。何か悩み事で心が疲れていたのでしょうか。何か大きな環境の変化からストレスを感じる日が続いていたのでしょうか。抱えきれない自分のコンプレックスに持ちこたえられない状況をずっと抱えてきたのでしょうか。


性格的な要因、生育環境なども潜在的にあったのかもしれません。しかし実際は思い当たる節がないことも、このパニック障害の特徴でもあります。むしろ社交的、行動力が旺盛な人ほど多い印象もあります。

 

しかし何が原因だったとしても、その時の大きな感情の揺さぶりが、その時の状況と不快な身体感覚と一緒になってミックスされて、間違った学習をしてしまいそのまま脳に深く刻み込まれてしまったのです。


正常な判断を失った状態で、その時の状態を冷静に処理できなかった脳には、あなたが平静を取り戻しても、実は脳は、あなたが「危機的状況」であると学習してしまいました。

 

あなたもおわかりのように、その後、同じような状況に置かれると、わけもなく同じような恐怖感と不快な身体反応が起きるようになっていきます。


その反応は、あなたが危機的状況に陥ると脳が認知しているからであり(実際は正しい認知ではない)そこからの回避を求めてくるからです。これを「脳の過剰適応」と言います。

 

そうした強い恐怖感や不快な身体症状が繰り返されていくうちに「また、なったらどうしよう…」と慢性的な不安状態に陥ることになります。これを「予期不安」と言います。やがてこの予期不安から、恐怖感や不快な身体症状が起きそうな状況を避けるようになります。


これを「回避行動」と言います。

 

こうした「予期不安と回避行動」の繰り返しで、生活環境が不便な状態になっていきます。乗り物に乗ることや、外食、美容院、歯医者、ショッピングなどの閉鎖空間が苦手となり、行動範囲が狭くなっていきます。


こうした身動きの取れないような感覚を覚えることが予期不安の材料となると生活の質がとても落ちていくことになります。

 

こうなると予期不安と回避行動がワンセットで繰り返されるようになり、ますます苦手意識が強くなって、社会生活が困難になっていきます。また対人関係にも影響が出てくるようになります。 


約束をすることや、時間が決められた状況など、仕事や、子供の世話など約束することが困難になったり、他人との関係で時間の制約が絡むような状況が困難になります。

 

人の思惑などにも、ひどく気にするようなり、対人恐怖に陥ったり、わかっていても確かめることがやめられない強迫神経症的な病態に移行してしまう人も少なくありません。


重症となると抑うつ状態を伴うようになり不眠となったり、感情的にも不安定になり、家で一人でいることも困難な状態になる人もいます。


ここまでくると周囲の人、家族にも影響が出てきます。初発から3〜6ヶ月ほどが経過してなお、このような状況に改善が見られない、ますます症状が苦手な場所が増えていきます。


対人関係にも影響が出てくるようであると、もはや「慢性期」になっており、適切な治療を受けることが大切です。パニック障害は「心の風邪」では決してありません。

 


■甘く見てはいけない!パニック障害の慢性期


 

急性期を過ぎ、慢性化すると回避行動によっていちじるしく行動範囲が狭くなるので、突然のパニック発作は必然的に少なくなります。ここからの苦しみは、毎日のようにつきまとう、予期不安が中心となります。


そうなると「パニック発作症状への怖れ」だけではなく、「不安を感じることを不安に感じてしまう」ようになり、ますます自分の感じ方に意識が強く向くようになり、神経がいつまで経っても休まることがありません。


ちょっとした不安や、身体の不調感に付きまとわれるようになります。健康な人が感じることのある不安とは違い、とても辛いものです。

 

「慢性期」に移行した状態での治療は、薬を服用しながらの行動の自粛による休息ではありません。パニック障害や恐怖症には治療法のシステムはちゃんとあります。


カウンセリングなどを利用しながら、そうした薬などの治療を定期的に受け、自分の生活に取り入れ習慣化していくことが必要となります。

 

慢性化してからは、自力では治すことが大変困難な状況下に置かれています。病気に対する正しい知識と、専門家の管理下のもと治療をしていくことが、一日も早い回復には大切です。


あなたが思っている以上に、パニック障害など不安症、恐怖症は手強く、適切な治療法を早期に開始しないと、改善されてくるまでに年単位を要します。時間の経過で自然と治っていく病気ではないことを自覚してください。

 


■精神科、心療内科では、どんな事が行われているのか


 

一般に日本においては薬物療法での対処から始まります。正しい処方と飲み方を守れば、急性期においては快方に向かう人も少なくありません。


しかしながら、ほとんどの人が薬による治療に抵抗し、適切な治療を継続して受けることなく、発症から数ヶ月、数年経過させ慢性期に移行してしまう人が大半です。

 

薬をとても嫌う人がいますが、適切な時期に飲む必要があると医者が判断した場合は、飲むことをおすすめします。もちろん副作用の影響は少なからずあります。


薬を服用して生活の質が著しく低下するようであったり、肉体的に辛い状態の場合は、医者に相談の上、薬の種類や量を変えてもらったりする必要があります。

 

一番やってはいけないことは、薬を勝手にやめてしまうとか、薬の量を自分で調整してしまうとか、本来頓服薬ではない薬を頓服のように使ってしまうなど、医者の処方を守らないことです。


それによって効果にバラツキが生じてしまいます。そんな状態で、薬が合わないというのは本末転倒と言わざるを得ません。薬の服用をしてもらってきて、薬に良い印象を持たない人は、意外とこのような自己流に走ってしまう人が少なくなく注意を要するところです。

 

しかしながら精神科、心療内科の現場においても、患者数の増加によって、薬やパニック障害に対しての適切な説明とフォローアップが、短い診察時間内では対応できないのが現状です。


そうなると双方共に不消化なまま治療が繰り返され、結果的に原因と思わしきことを排除しようとすることに終始し、その場かぎりの方法で患者さんはドクターショッピングするか、自分で治そうとして悪化させてしまっていく人が大半です。(私のもとへカウンセリングを依頼する方の8割はそのような慢性化に移行した、年単位で苦しんでいる方たちです)

 


🔵治らない治療法

 

治療は「原因」を探ることではありません。その方法はとても古典的で、かえって悪化していくことがわかっています。


これは先生も患者さんも「辛いパニック発作症状が出ないようにするにはどうしたらいいか」「不安にならないようにするには?」という「間違った発想」になりやすく、薬と同様に、その場がやり過ごせればと安直な方法論に走り、最終的にはそうした方法にもネタ切れとなります。


結果的に治療が全く進んでいない状態で、何年も悩み続ける人が少なくありません。そうした方法は、急性期には通用するのですが、慢性期においてはむしろ回復の妨げとなる事が多いのです。

 

また近年脳科学の発展などで、なかなか結論めいた証拠集めはされているものの、それに伴う方法は、やはり薬物療法だけの介入になりがちで、回復には程遠いのが現状です。

 

「薬物療法、原因探しだけの治療」の弊害は、回避行動をさらに促進することになります。しかしパニック障害を始めとする、不安、恐怖症状は回避行動はかえって症状の悪化を招きます。


きちんと病態を知る必要があります。急性期と慢性期では治療法は異なるのです。好ましくないものは「排除」する方法で私も取り組んできて、約10年間、まったく改善せずに苦しみました。


しかし、いまだにこのような治療法を進めるしかないのが精神科、心療内科では現状です。(保険診療内では余計にそうするしかありません)

 

また未体験者が語る一般論と、体験者でのアドバイスにはひらきがあります。脳科学がいくら発達して、脳の変化に異常が見られることがわかっても、日々変わる人の心の移り変わりにまでは治療法が追いついていません。


薬はあってもいい、でも薬だけでは治りません。また社会通念として「問題の裏には原因がある」という教えも、心の病では通用しません。