Q58:パニック障害を治すなら、まずこの原則を覚えておきましょう

りらこさんからの質問

初めまして。
パニック障害歴17年になります。ほぼ症状なく落ち着いていた時期もありますが、東日本大震災で停電中渋滞に巻き込まれ、そこで腹痛に襲われてトイレに行けなく動悸が起きてしまった経験をしてから過敏性腸症候群(下痢型)にもなってしまい、そこから悪化の一途をたどっています。
 
私の場合はトイレのない空間がダメなんです。
なので新幹線など乗り物でもトイレの付いてるものは全然大丈夫です。
 
トイレがない空間(朝礼など行けない状況も)になると腹痛がおきて便意に襲われてしまい、どうしようと思うとそこから動悸(パニック発作)に繋がります。
 
なので渋滞やトイレの付いてない乗り物は一切ダメです。年々酷くなり今は遊園地のメリーゴーランドや数分間の乗り物も乗れなくなってしまいました。乗ろうとするとソワソワして動悸と腹痛に襲われます。
 
かかりつけ医からは、乗ってひたすら訓練するように言われてますが腹痛と便意が我慢出来る自信がありません。トイレに行けないと思えば思うほど腹痛がおき便意が襲ってくるのです。
 
いつでもどこでもトイレの場所とお腹の調子を気にしていてもう疲れてしまいました。腹痛と便意は先生の専門外かもしれませんが藁にもすがる思いで質問させて頂きました。
 

回答


トイレに行けないと思えば思うだけ、腹痛、便意が生じてくるのは今のあなたにとって当然の反応です。
 
あなたにとって、今や「トイレに行けないのでは?」と解釈してしまう状況は、すべて安全、安心を脅かされること、つまりは過去のあの震災時の状況で起きた動悸で、生きるか死ぬかの苦しい感覚、気持ちが再来することになると強く心に刻み込まれているからです。
 
しかし、それは過去のあの一点の出来事に過ぎません。ただその一点の出来事があまりにあなたにとってセンセーショナルだったのでしょう。脳は大パニック、理性的な判断が一時的にせよ失われてしまいました。その時に解釈してしまった恐怖感と状況(環境)を結びつけて「学習」してしまいました。
 
そうした体験をすると、脳はあなた自身を守るために、同じような状況下になる可能性を常に探るようになります。そしてそれが見つかれば、身体的な反応、違和感を通して、そこに近づけさせることを拒むようになります。
 
ある意味では正常な反応ですよね。あなたを助けるために行っている反応でもありますから。
 
その後の、あなたの解釈はすべて、「すぐに抜け出せないような状況、トイレのない場所は、いざという時に逃げられない、安全・安心が確保できない」となります。でも、この解釈が行き過ぎたものであることぐらいは、あなたにもわかっているはずです。それでも自然とそのような解釈をしてしまいます。
 
実はこれはあなた自身でもあるのですが、あなたの脳がそのように仕向けているのです。わかりやすく言えば。
 
間違った行き過ぎた学習をしてしまった脳ではありますが、あなた自身をあの時の危機的状況ヘ向かわせないための方策なのです。あなたが自分の意志でいくらその解釈をコントロールしようとしても、できるものではありません。
 
あの震災時の状況と、その時の症状、その時に放った言葉それぞれが複雑にからみつき、それからというもの、その記憶の再生が日常で繰り返されて、今日さらにその解釈が広がり間違った「再学習」が進んでしまったのです。今日になり、昔よりできないこと、行けない場所が増えているのはわかりやすく言えば、そんな構図です。
 
さて前書きが長くなりましたが、治していくにあたって覚えておいてほしいことがあります。
 
「我慢できるかどうか」「自信があるかないか」「症状があるかないか」「気にしてしまうか否か」を自分のものさしにしないようにしてください。
 
行動練習は、苦手になってしまったものを我慢して行っていくことではありません。
 
日常での生活上、どうしても必要なことは我慢して行っているあなたにとって、訓練として行う練習まで苦しくなってしまったら継続できないですよね。
 
まずは、「第一の恐怖」と「第二の恐怖」の区別をしっかりしましょう。
 
ある状況を目の前にしたときに感じる動悸と腹痛は「第一の恐怖」です。これは当面避けられません。この症状の存続を許しているのは、その後に考えてしまう思考の数々です。そしてこれが「第二の恐怖」です。
 
あなたの「第二の恐怖」のネタは何でしょうか。これを書き出してみましょう。そしてそこに書かれていること、それは事実でしょうか。確認しましょう。もちろんその中には、過去の体験から得たネタもあるでしょうから、あなたにとっては事実に基づいたものもあろうかと思います。しかし中には「思っているだけ」というものも多く含まれていると思います。
 
そして今後、あなたが状況に反応して「第一の恐怖」そして「第二の恐怖」に移行した時に、その解釈を良い方向へ考え直そうとしたり、意志でコントロールしようとしないことです。気を紛らわす行為は「戦い」となりますので、その場では何となく切り抜けられたとしても、次回以降から余計に恐怖感が増すことになります。これはあなたがやってきたことですからわかっていることと思います。
 
「第二の恐怖」に気付くと共に、その内容をジャッジしないで受け容れていきましょう。受け容れはポジティブに考えることではありません。あくまで今のあるがままの自分をそのまま「あぁ、そうなのね、そうなっているのね」と受け取ることなのです。
 
それがあることを、「それはある」と認めることです。これをまずそれぞれの状況で行いましょう。あなたと症状との和解です。「それがあること」を素直に認め、戦うスタンスを脱していくこと、症状との対話の始まりです。
 
これらに対する理解は、You Tube動画の「講義動画編」でよく勉強してみてください。
 
震災など、災害がきっかけで、持病だったパニック障害を悪化させてしまった人は非常に多くみられます。
 
生活が不便になりますので回復を焦り、症状の理解をしないままに、できなくなってしまったことを我慢して訓練して、さらに悪化させていく人がとても多いです。
 
こうした事態を解決へと結びつけるには、年単位かかります。まさにマラソンですから戦略を立て、今回回答したことをまず行いましょう。恐怖感が2つあること、その区別を毎回の状況の中で区別していく作業です。ここができていないと、行動練習をいくらしても、効果はありません。
 
今回、コメント欄での回答ですので、内容は限られますことをご了承ください。
 
それ以降の内容については、カウンセリング等を継続して受けることをお勧めします。またブログ、You Tube等を繰り返しご覧になり練習を焦らずに進めていってくださいね。