Q90:多くの人が間違える、「パニック障害克服の取り組み」への誤解

S.Yさんからの質問

 

こんにちは。私はとがし先生のカウンセリングを一度受けたものです。同じような悩みを持っている皆さんのアドバイスにも繋がれば良いと思いご質問します。

 

カウンセリングを受けた後に高速道路に乗る機会があったので、友人の2人で乗りました。
まだ私は過敏な状態にあるので案の定、強い不安が襲ってきました。

 

そこで、アドバイス通り予期不安や不安が消える事を意識をあまりせずにギリギリまで実況中継を行いました。

 

あまりにも恐怖感が強かった為に頓服の安定剤を服用してなんとか乗り切れましたが、次の日には予期不安が強くなっている様な気もします。

 

これでも合っているのでしょうか?行動体験をするストレスの度合いが高すぎたのでしょうか?

 

 

回答

 

 

カウンセリングでお話した事を、さっそく生活に取り入れてもらえたことは、とても良かったです。とりあえずやってみることが、とても大事です。

 

練習に失敗はありません。

そもそも論として「うまくやろうとする」こと自体が、練習の目的には叶っていません。

 

人間ですから、うまくやりたい、よい結果を残したいのは山々な訳ですが、この練習の理解、コツを会得するまでは、期待する結果とは遥かに遠く感じることもしばしばです。

 

しかし、これはこの事に限らずでしょう。

語学や、スポーツを勉強するにしても、自分の満足するレベルに達するには、そこそこの時間、そして根気が必要です。この練習もまったく同じです。

 

今回のことに関しては、苦手レベルとしては、あなたにとってかなりトップレベルにあるかと思います。「これも練習のうちだ!」と良い機会だからやってみたのでしょう。

 

ただ場面としては飛び込むには、少々レベルが高かったかもしれませんね。その結果としてかえって予期不安を翌日に持ち込んでしまったことは残念に思うかもしれませんが、よくあることです。

 

練習の基本としては、下からの積み上げなので今回の高速道路での練習としての位置付けは、上級といったところです。

 

あなたが苦手とする場面を、今回の機会に試されたことは大変良いことです。しかし結果を見たときに、思っていた以上に、かんばしくない結果に戸惑っていらっしゃると思います。

 

しかし、この戸惑いこそが練習の目的でもあり、次回に活かすための材料となります。失敗は成功の元です。

 

もちろん苦手レベルがトップレベルにある場面を、日常でやらなくてはならない事もあるでしょう。そんな場面を避けずに行うことは大事ですし、そんな場面で実況中継法等を、あえてやってみることは大切です。ですから、今回のチャレンジは大変良いことでした。

 

この練習方法が、はたして「自分に合っている良い方法なのか」を測るには、まだ早急ですし、合うも合わないも算数の九九のようなものなので、どんな手法を取り入れるにしても、この練習なくして、パニック障害は克服することは叶いません。

 

病気の性質を逆算して考えた場合、避けられない練習です。

 

さて重要な事ですが、皆この事を忘れてしまうことの一つに、「練習の目的」への誤解があります。

 

練習の目的はその場でうまく症状をコントロールするためにあるわけではありません。

 

もちろん練習が進み理解、コツが「体感」できてくると、思ったような反応が出てはきますが、まだ始めたばかりです。目に見えてくるまでには、まだ数ヶ月はかかります。

 

ここのポジションで誤解される方がとても多いため、お話を繰り返しますが、練習の目的は予期不安やパニック発作症状を出ないようにするとか、たとえそれらが発生しても、コントロールすることができるようになることでは…

 


「ありません」

 

 

あくまで目的は、予期不安やパニック発作が出てきても、慌てながらも、やっていることを放棄せず、やれることを増やしていくことです。

 

気分優先ではなく目的優先として動けること。
気分にそれほど左右されずに、目的を達成することができるか、その範囲を広げていくことができてくるかです。

 

その結果として、耐性が身に付き、事を受け容れる度量が身に付き、気付けば予期不安やパニック発作症状が和らぎ、そのたびにコントロールできている結果を手にする事ができます。

 

この練習の目的を勘違いすると… 

 

「苦手となった事を怖くてもいいので、やる!」

 

「根性でポジティブで乗り越える事が大事なんだ!」

 

「慣れで治すしかないんだ!」

 

といった取り組みになり…

 

やがて失敗します。
そしてそれは、大きな勘違いです。

 

こうした勘違いのもと、うまくいかなくなると、やがて「これはあの人だから治ったんだ、私には無理だ」と結論付けてしまいます。そしてまたネットの情報の荒波に自ら飛び込んでいき、溺れることになるのです。

これは過去の私の話でもあるのです。そして大半の人が始めたころ、ここでつまずきます。

 

そして皮肉な事に、何度お話しても、理解しているつもりでも、この誤解に迷い込みます。それは結果がうまくいかないときです。もちろん、かつての私もそんな罠に何度もハマりました。だから何度もお話をしているのです。

 

なのであなたは、ここで気付いてラッキーなのです。

 

この件に関しては、当ホームページの「治すための基本」にも重要なことが述べてありますから熟読するなり、コピーしていつも目に付くところに貼っておくとよいでしょう。

 

またカウンセリングは、ひと月に1回、半年ほどは続けて下さい。(お金の計算をしてしまう人は、自分がいったいどうしたいのか、何を優先すべきなのかを考えて下さい)

大抵は実況中継についても間違いが多くあります。頭での理解に体が理解するまでは時間がかかります。


そして、その間こうした思い違いの罠にハマる人が大半です。ソレを知らずに、この方法が「悪」だと決め込み、簡単にやめてしまう人がいますが、大変もったいないことです。

 

練習にもやり方がありますし、場面の設定も初めは戸惑うことも多いでしょう。だいたい半年ほどの継続ができれば、基本的なことは落とし込みできます。どうか諦めずに継続のための工夫、努力をしてくださいね。

 

今回の件は、はじめだからこそ起きてしまうことでもあります。練習の主旨をもう一度見直していただき、きちんとした行動計画を、基準にそって立てていただくようお願いします。