ちびきちさんからの質問
いつもブログを拝見しており、大変お世話になっております。昨年10月頃富樫さんのカウンセリングを一度受けた者です。
あれから通院している病院での認知行動療法と服薬、富樫さんのブログを読むなど、自分なりに大波小波を乗りこなして年明け以降は断薬ができる程まで回復しました。
最近は何も考えずに家事や外食も楽しめるまでになっていました。今なら妊娠出産もできると思っていたのですが、この度妊娠が発覚してからというもの毎日泣いてばかりいます。
予期不安の中波が押し寄せていて自分がそれに囚われているのも分かっていますが、久しぶりの中波に今回はなぜか波に飲まれてしまいそうなのです。
せっかくのマタニティライフを楽しみたいのに、パニック症を抱えた身であるという事がそう思えなくしています。何かアドバイスを頂戴できればと思います。宜しくお願い致します。
回答
少しずつパニック障害特有の「波」への対処もうまくなってきているようですね。断薬までこぎつけたのも喜ばしい限りです。
将来に希望も取り戻し、今なら妊娠出産も!と期待していたのに、今回のような事態…
女性の方がとても多い、私のカウンセリングでは、このような妊娠出産への期待と不安に悩まれる方はとても多いです。これは男性にはない、強い不安とプレッシャーです。
さて、今回の言うところの「予期不安の中波」はどこからきているのでしょう。
喜ぶべき妊娠だったのに、なぜか妊娠したらしたで、漠然と不安になってしまっていることに戸惑っている。
それとも、めでたく妊娠したというのに、こんなタイミングで、予期不安が出てきた事に戸惑われているのでしょうか?
どちらにせよ、パニック障害になると環境の変化に敏感です。妊娠という環境の変化だけではなく、うまくいっていた不安への対処が、突如としてうまく機能しなくなったときにも、それも環境の変化の一つです。
そして悩まれている人にとっては、「失望感」は人もとても不安にします。これは人間の宿命です。
良い変化であることも、今まで違うということで、「ちゃんとしなきゃ」「うまくやりたい」「もとに戻りませんように」など、人間ですから「平穏無事」に、事の変化に適応したい気持ちも山々です。
しかし、そう期待を高くとらえていけば、行き過ぎた期待の安全弁として働くのが不安というもの。
不安がある程度あるからこそ、人は用心深くもなりますが、一方でそのおけげで適切な準備をして望めるのです。そもそも大切なことであればあるだけ、不安はあるべきなのですね。
出産、子育てはあなたにとって自分の事以上に、大切なことでしょ?
そう言った意味で、今回のことは、あなたにとって予期し無かったことである一方で、ひそかに、再発を怖れていたことでしょう。こんなタイミングで…あなたは思うでしょう。
しかし妊娠という喜ばしい出来事も、嬉しい反面、こうした期待「ちゃんと、うまく」が働いて、神経を過敏にさせ、平穏無事に過ごせていた日々を、まだ見通しが未知な出産までの日々を不安に感じ取ってしまっても不思議ではないのですよ。
今回の予期不安というものは、嬉しいながらの妊娠への直面で、「妊娠出産とはこうありたい、あるべきだ」を、「でも、またその間にパニック発作になったらどうしよう」と妊娠とは異なるストーリーをご自身の中で作り出してしまっているのかもしれません。そのストーリーに怖れを感じ取り、予期不安を作り出しているかもしれませんね。
妊娠出産というより、それにまつわるストーリーで事態を必要以上に怖れてしまった結果としての予期不安といった要素もあるということです。
状況はどうであれ、心がけ、おこなっていく事はわかりつつも、不安は不安なわけで…とても落ち着かないかと思いますが、自分がどこに不安を感じてしまっているのか、そのストーリーを知ることです。
そして、それに対して受け容れていくこと、浮かんで通り時間の経過に任せることです。
感じてくる予期不安の波に、そのストーリーによるものであるとの実況中継という「ツッコミ」を自らに出していきましょう。実況中継による「気付き」をしっかりやっていくようにしましょう。(実況中継のやり方、やることの意味をいつの間にか履き違えてやっている人がとても多いので、再度カウンセリングを検討してみて下さい。復習は大事ですよ)
いざ出産までいけば、なんて事はない、むしろあの不安があったからこそ、こうして無事に出産できたのかも。とりあえず良かった!嬉しい!となるのは、私からは目に見えています。
あなたの今は、たしかに予期不安という行き過ぎた不安ではあるものの、安全、安心した出産、すべては愛おしい赤ちゃんのため、あなたの期待からくるものです。
なので今回の少し大きい予期不安の波は、落ち着かない気分かもしれませんが、あなたにとっては、ある意味では、元気な赤ちゃんを産むために、あなたに必要な安全弁なのかもしれません。
繰り返しますが、不安を悪者にしてはいけません。
出てくる不安には何らかの自分を守る理由があるものです。その理由はあなたがどんなストーリーを作っているのか、その内容に応じたものとなります。
大事なことであればあるだけ、人は不安にもなります。
だからこそ、あなたの不安はきっと、元気な赤ちゃんを産むに至るものとなるでしょう。安心して大丈夫ですよ。すこし不安に助けてもらっているととらえてみてくださいね。