Q173:実況中継の意味を取り違えてませんか?

沙羅さんからの質問

富樫さんいつもお世話になっております。

質問させてください。
富樫さんに一度カウンセリングをお願いして以降、自分なりに行動練習をしてきました。
1年程たちますが行動範囲が広くなるどころか狭くなってしまいます。

私は田舎住みなので電車やバスではなく車が生活上必要になります。なので初めは一人で車で10分ほどの場所にあるお店に行くことから始めました。

初めのうちはお店に入店して数分いられたりできていましたが回数を重ねるうちにお店までの車での移動中に強い発作を起こすようになりました。

そのたびに「こんにちは。気持ち悪さを感じているね。焦って何とかしようとしている自分もいるね。そのことに気付いているよ。」と実況中継をします。

実況中継の仕方は間違っていないでしょうか?

なんとか家に帰り次の日は怖くて仕方ないですがここでやめてしまうと恐怖が強くなってしまうかもと思い少しレベルを下げて家から車で5分ほど運転することになれたら、またレベルを上げようとしましたが今度は3分ほどで強い発作が来るようになってしましました。

それが続き徐々に行動範囲が狭くなり今では家の周りしか運転できなくなりました。家の周りですら強い発作が出る時もあります。

今は親に付いてきてもらって夜に家の周りを運転するという行動練習をしていますが1年続けていて行動範囲が狭くなってしまった状態に今は精神的にも辛い毎日です。

また嘔吐恐怖もあるのですが初めは外出先での食事だけが困難だったのが今では自宅での食事も出来なくなり胃腸薬と安定剤の力を借りなければ食べられません。この時の実況中継も先ほど書いたような方法でやっています。

自分のやり方が間違っている気がしてなりません。

焦ったってしょうがない。これが今の自分なんだと思い行動練習を続けていますが今は頭がぐちゃぐちゃの状態です。

このまま今の行動練習の仕方、実況中継の仕方を続けていけば少しずつ前に進むことは出来ますでしょうか?

長文、乱文お許し下さい。


回答


この質問を読んで、「ダメじゃん、実況中継なんて!」と思う人もいるかと思います。


「私も同じ!やってるけど全然変わらないよ、むしろ悪くなってる気がする!」

一年もまじめにやっていて、行動範囲が狭くてなっているとしたら、明らかにやり方が間違っていると考えますが、実況中継のセリフを読んだところ、大きな間違いはしていないように思います。セリフは。


実況中継は実際に起きている、その状態をジャッジせずにありのままに観察し、それを言葉にしていく作業です。


実況中継のセリフ自体に大きな間違いがないとしたら、何なのか。

それは実況中継を発作症状を抑える目的に、いつのまにかすり替わっていることが一つあげられます。


実況中継を症状が和らぐまで連呼していたり。

実況中継が終わった後に、症状の有る無しに、または楽になったか否かにとらわれていたり。


やったんだから、我慢しなきゃと、結局は症状を我慢するものとして受け取っていたり。

やったのに、なんでまだあるの!と、いつも症状に関心が向きっぱなしだったり。


安全、安心でありたいという気持ちが強すぎて、何かが起きるのではないか?と妄想している今が、その妄想がまだ起きてはいない、一番安心な状態であることを忘れていたり。


実況中継の丁寧さが失われ、ただ気をそらす方法として使っていたり。


実況中継のやり方というより、実況中継のもつ意味合いが、症状や不安をどうにかするものとしての色が濃くなっているかもしれません。


そして、もう一つ。

その恐怖感を感じている身体の部位はわかっていますか?

喉元だったり、後頭部だったり、胃の辺りだったりと人さまざまなわけですが、あなたの恐怖を表現している身体の部位、はっきりわかっていますか?

強い恐怖感という感情にとらわれ過ぎて、身体の不快反応に意識が向いていない、むしろ実況中継をすることで、あえてその部位に目を背けていることもありえます。

あなたが恐怖から固まって、不快な感じがする身体の部位と対話するつもりになって、実況中継をしてみてください。

「不快な身体の部位と対話」これがキーポイントです。

機会がありましたら、またカウンセリングを受けてください。自分なりの理解には盲点があるものです。

回復の過程では、いっけん後退しているような時期もあります。でもそんな時は、頭ごちゃごちゃ、整理もつかなくなり焦り、それがまた症状への過度なとらわれへと繋がるものです。